ACN 養殖用種苗生産速報

2007年9月~2008年8月

<マダイ>
養殖用種苗尾数は5,825万尾(昨対 9%減少)
種苗導入意欲の減退
昨シーズン(2006年9月~2007年8月)はマダイ成魚の対韓輸出の余韻が残っていて、マダイ種苗生産尾数が増加したところに、今シーズンは成魚価格の下落-出荷低迷の影響で、養殖場への種苗導入は大幅に遅延した。そのため、多くの種苗場では夏越し分も含めて、大量の稚魚を長期間在庫する状況が続いた。年が明け、春先には宇和島からの韓国向けの輸出が前年同期を上回り、明るい兆しが見えたものの、韓国通貨Wonの下落、日本国内消費の停滞等で、成魚価格の回復には至っていない。マダイに限らず、どの魚種についても同様であるが、成魚相場の下落は種苗導入意欲減退に直結しており、山崎技研、近畿大学を例外として、生産計画を前年比マイナスに設定した種苗業者が大部分であった。 その結果、今シーズンの養殖用種苗尾数(出荷、自家用、越夏在庫)は昨シーズン(6,370万尾)より9%減少の5,825万尾(民間24社、公的3事業場)となった。
疾病被害は散発的
全般的に育成状況は良好で、疾病や寄生虫による被害も少なく、8月末時点ではイリドウィルス症も散発的で、大きな被害も聞かれない。今年は海水温低下傾向が早く、疾病被害は少なく、今の状態で夏場を乗り切るものと思われる。
加温用A重油や関連資材価格の高騰で種苗生産経費は、増大しているにも拘らず、成魚相場低迷で種苗価格への転嫁は全く進まず、8cmサイズで10円/cm、13cm up7~8円/cmであった。

<トラフグ>
養殖用種苗尾数は1,255万尾( 昨対 33%増)
年内採卵孵化で、年明け1月出荷の早期種苗生産業者は、近畿大学他3社で生産尾数は約68万尾で昨シーズンとほぼ同数、販売尾数は昨年(3万尾)を上回り19万尾となった。 出荷先は加温設備等のある陸上養殖場(循環式・温排水を含む)に限られており、低水温時期の種苗導入には海面、陸上養殖双方、消極的である。
昨年12月下旬より養成親魚からの採卵準備に入ったが、孵化仔魚の池入れ完了は2月中旬以降と遅れた。天然魚からは昨年同様、熊本県天草市で3月末採卵され、7社が購入した。
種苗導入意欲は旺盛
養殖場からの種苗注文は例年より早く、年明け後の成魚の上げ相場と共に活発となり3月末には例年の20~30%増しの受注した業者も多く、受注を辞退する業者も出始め、久々の売り手市場になった。 そのような状況下で、出荷サイズは若干小さくなり、7cm up(+歯切り)を6cm up出荷とする種苗場もあった。
販売価格は6cm up 95円/尾・ 7.5cm up 105~110円/尾(歯切り+10円~13円)であった。養殖用種苗尾数(出荷、自家)は昨シーズン(940万尾)より33%増の1,255万尾、種苗生産業者は長崎種苗・金子産業など 23社(民間 20社、 公的 3事業場)で昨シーズンより2社増加 (2社はマダイ種苗を縮小しトラフグへ)。

<ヒラメ>
養殖用種苗尾数は886万尾( 昨対 10%増)
親魚の有無で明暗
昨年9月の仕込みは受精卵購入業者にとっては満足のいかないものであった。一方、自家親魚を保有する業者は積極的に仕込み、親魚の有無で明暗が分かれた。早期物は例年並で年内(2007年9月~12月)出荷尾数は昨シーズン同様210万尾、年明け(2008年1月~8月)出荷尾数は676万尾で合計886万尾であり、昨シーズン(807万尾)より10%増加した。生産業者はまる阿水産、日清マリンテックなど28社(民間21社、公的7事業場)で公的機関の増加が目立った。早期物を除く年内の種苗価格は、7cm up浜値90円/尾、年明け3月以降は80円/尾であった。
ここ数年、ウイルス性出血性敗血症(VHS)による稚魚の大量斃死、エドワジェラ・タルダ症、新型連鎖球菌症等の疾病での養殖歩留まり低下傾向は継続しており、このため種苗導入尾数は増加傾向にあるが、このことは、養殖経営にとっては逆風である。今シーズンは歩留まり50%の業者が続出する一方で、例年以上に成魚の出荷が低調であり稚魚購入と成魚販売がセットの業者が増加した。VHS対策として、11月に早期種苗を導入し、その後12月~2月を避け、水温上昇傾向となる3月中旬以降に8~15cmと異なったサイズ゙の種苗導入する業者もいる。
韓国からの輸入
韓国からのヒラメ成魚を主体とした活魚輸入量は2005年の8,483トン※をピークに韓国通貨Wonの上昇に伴い2007年は5,294トンまで減少したが、今年は一転して増加傾向にある。このように、国産ヒラメの相場は韓国通貨Wonと日本円為替相場にリンクしており、韓国Won上昇に対応して浜値は1,800円/kgまで上がり、下落した現在は1,300円/kgとなっている。

1、 財務省HP貿易統計より Hs.No0301.99.290輸入活魚(但し以下を除く:観賞魚、ウナギ、養魚用稚魚、ニシン、鱈、鰯、ブリ、アジ、甲殻類、軟体動物、その他の水棲無脊椎動物)

<シマアジ>
出だしは順調
2007年10月ノグチフカが採卵し、近畿大学、山崎技研も年内に沖出し、年明け1月にはマリーンパレスが仕込み、各社とも順調なスタートであった。そのため、昨シーズン後半の種苗の品薄感から一転して、引き合いは低調となった。ところが出荷サイズになってからの原因不明の斃死やゴールデンウイーク期間の赤潮被害の情報が回ると、成魚相場の堅調さもあって引き合いは強くなったものの、結果としては、養殖用種苗尾数は289万尾(民間6社、公的2事業場)で昨シーズンと同数であった。シマアジ種苗生産業者数は限られており、種苗の確保のためには早めの予約注文が有効である。

文中社名敬称略

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