平成23年1月
太平洋貿易株式会社
代表取締役会長 田嶋 猛
東アジア3国の中の日本
昨年の養殖業界は、いまだに新規参入の続くマグロ養殖とウナギの完全養殖の話題で賑わい、一部魚種では相場を下げましたが、全般的には堅調な値動きの上、年末には大時化のため水揚げが減少し養殖魚の出荷が急増するなど、総じて平穏な1年となりました。年明けの相場もトラフグは上げ基調で、ヒラメについても韓国の口蹄疫、鳥インフルエンザ問題で自国消費が増加し、対日輸出が減少したため、若干値を戻したようです。
私事で恐縮ですが、昨年4月から太平洋貿易(株)の社長職を後輩に託して会長職となり、水産業界以外の総合商社、銀行、電力、不動産、運輸、建築、機械、アパレル、人材派遣そして官公庁などいろいろな人と接する機会が増えてきました。福岡にいますので九州経済を中心とした話題になってくることは否めませんが、東アジアの発展、特に中国、韓国の発展が九州の発展に直結するという話題は度々耳にします。現に九州のゴルフ場ではハングル語で書かれた案内が増加し、福岡市内のデパートでは韓国や中国の人をよく見かけます。彼らは概して大きな声で会話し、服装や髪形が日本人とどことなく違うので見分けがつきます。尖閣沖漁船衝突で中国嫌いの日本人が、ますます増加したことでしょう。しかし、この問題で急減した中国人観光客の増加を期待している日本人もたくさんいます。日中韓の国民は互いに他国を嫌っているという記事を目にすることがありますが、隣国同士は利害が相反するためなかなか仲良くなれません。しかるに、今の日本経済は中国なくして成り立たないことも、ほとんどの人が理解しているはずです。つい10年前までは日本経済が圧倒的に優位に立っていたという事実が、自信喪失気味の日本人の胸中に、やり場のない憤懣を蓄積しているように思えます。しかしながら清王朝までの中国は経済、文化など世界一の大国で、当時の日本はアジアの東の端の小さな島国だったのです。そのことを思い浮かべれば、今の中国が急速に発展し、世界の中で存在感を増してきているのも、うなずけるのではないでしょうか。既に漁獲量世界一の中国は国民のために更なる漁業資源を求めており、自国内のインフレ状態が更に輸入に拍車をかけるものと思われます。このような状況は、日本からの水産物輸出や中国内でのフグ食解禁にとって追い風になると思います。
2008年に国賓として来日された胡錦涛国家主席との共同声明には「日中双方は、[戦略的互恵関係]を包括的に推進し、また、日中両国の平和共存,世代友好,互恵協力、共同発展という崇高な目標を実現していくことを決意した」とあります。日本の政府も民間も中国に臆することなく、せめて韓国のようにメリハリの効いた態度を取りたいものです。