ACN 養殖用種苗速報

2010年9月~12月出荷尾数、2011年1月~ 予測

<マダイ>
3年前、2008年9月集計の養殖用マダイ種苗尾数は5,825万尾/年であったが、2009年、2010年の9月集計では、4,300~4,400万尾/年と大幅に減少した(ACNレポート第31,33号)。主な原因としては、消費者の低価格食品(節約)志向による養殖マダイの販売低迷が考えられるが、マダイ在庫減少と消費者の節約疲れの影響か、昨年春以降、図1に示した韓国への活魚輸出の右肩上がりの価格のように、成魚相場が好転しており、マダイ養殖業者の種苗導入意欲は高まりつつある。2010年9~12月の夏越し種苗(立仔)販売数量は490万尾で、種苗業者自体で抱える在庫はほとんどないと推察される。
2010年9月以降に生産した種苗は年末までに145万尾が出荷されており、現時点では、沖出し済みや陸上水槽のものを含めて山崎技研、近畿大学など12社で3,555万尾のマダイ種苗が生産中である。現状では成魚相場が堅調に推移しているため、今期は2年ぶりに養殖用種苗の増加を予測する声もあるが、種苗供給増加-成魚価格下落-種苗価格下落という苦い経験を持つ種苗場経営者は特別な増産体制は取っていない。したがって、マダイ種苗尾数の大幅な増加はないと推察され、このことは養殖業者にとっても望ましいことと考えられる。

<トラフグ>
2010年9月~12月の早期種苗の生産は近畿大学の18万尾であった。そのうち年内出荷は13万尾であり、依然としてトラフグの早期種苗需要は少ないものの、越年した5万尾も既に出荷済みであり、加温設備を備えた陸上養殖場などからの早期種苗導入の兆候が感じられる。近畿大学以外では12月末に1社が採卵したものの、ほとんどの種苗場は昨年同様に12月から親魚を仕立て、1月上旬準備に入り、2月上旬から採卵、3月下旬から4月上旬に沖出しの予定である。種苗場で養成して採卵するトラフグ親魚には (1)養殖場で選抜育種したオスとメス (2)5月頃から漁獲され11月まで畜養されたメスが供される。 他方、3月下旬から漁獲される産卵期のいわゆる天然のオスとメスは、水揚漁港で受精させた後、種苗場に輸送される。
一昨年(2009年)の養殖用トラフグ種苗尾数は1,035万尾、昨年は830万尾であり、この10数年で最も少なかった。そのため市場には品薄感があり、年明け後の成魚の上げ相場を受けて、種苗の問い合わせや注文は昨年より早くなっており、今後活発な引き合いが予想される。
中国では食品インフレが進んでおりトラフグ以外の養殖魚種も価格が上昇している。水産加工品の輸入商社によればマダイ浜値は1年間で1.5倍の50元/kg(650円/kg)まで上昇したため輸入は停止しているとのことであった。したがって、中国での養殖は日韓への輸出に依存するトラフグよりも国内販売のできる魚種が主流であり、本年のトラフグ生産予測は昨年の約1/2との情報もあり、中国でのトラフグ食解禁が日中双方の養殖業者にとって期待されるところである。

<ヒラメ>
2010年9月~12月の養殖用種苗はまる阿水産、長崎種苗など民間9社による生産で、出荷尾数は昨シーズンより減少し約120万尾であった。出荷サイズは8~9cm で、浜値は昨シーズン同様90円/尾である。
2010年1月からヒラメ活魚の輸入統計が検索可能となったので港別輸入量と平均単価を図2に示す。韓国からのヒラメ成魚は9月以降、単価の急落と共に毎月400トンを超えるペースで輸入されており、このことが国内ヒラメ成魚の出荷が停滞した主要因であると考えられる。当然のこととして養殖業者は種苗導入を手控えざるを得なくなったものと推測される。
韓国産輸入単価は12月には1,000円/kgを割ったものの、韓国内で発生した口蹄疫と鳥インフルエンザのためヒラメの自国内需要が高まり、年明け後約100円/kg戻したようである。しかしながら、日本国内の相場の戻りは遅くいまだに弱含みである。ここ数年陸上養殖場ではヒラメ相場の下落に応じてトラフグやカワハギの導入比率を上げる業者があり、今シーズンはその傾向が強まりそうである。

<シマアジ>
例年通りノグチフカ、近畿大学、山崎技研などが順調に採卵、仕込みを行っており、1月下旬にはマリーンパレスも採卵予定である。
一昨年まではマダイなど多くの養殖魚価格の低迷が続く中、シマアジ価格は安定していたため種苗の需要が高まり、導入尾数は年々増加した。その結果、2009年の販売尾数は3年前の2006年と比較して45%増の376万尾となった。
一方で不景気が続く中、数年に渡る種苗導入増加の影響が昨年春頃から出始め、在庫過剰による成魚相場の下落が生じ、種苗の需要は減少傾向にある。これを受けて各種苗業者の販売見込みは、一部は前年並みであるものの全体的には減産傾向である。
具体的には、民間6社、公的2事業所で344万尾と推定され、2010年の販売実績361万尾対比95%である。しかし養殖業者からの注文の入り具合が鈍いとの事で、実際は更に減少するものと思われる。

文中社名敬称略

PAGE TOP