ACN 養殖用種苗生産速報(年計)

2008年9月1日~2009年8月31日

<マダイ>
養殖用種苗尾数 4,330万尾 (昨対26%減少)
長引く成魚の販売低迷により、各養殖場での在池尾数は多く種苗導入意欲は極めて低かった。その情勢を受け、種苗生産業者においては生産尾数の減少を強いられ、昨年より増産した業者は皆無であり、養殖用種苗尾数(出荷、自家用、夏越在庫)は近畿大学、山崎技研、ヨンキュウ等(民間23社、公的3事業場)で昨年比26%減の4,330万尾となった。そのうち夏越種苗は、370万尾と推計される。種苗販売低迷を見越して、飼料等経費節減のため早々に種苗の処分を行った種苗業者もあり、昨シーズンにも増して厳しい経営状況である。種苗単価も7円/cmが中心で依然安価傾向が続いている。なお、種苗場から養殖用として出荷される尾数は選別(サイズ、変形等)、斃死等により減少し、一般的には沖出し尾数の半数以下になっているものと思われる。

生産育成状況では、細菌性疾病による斃死が地域により起きたようだが、ウィルスなどによる大被害は全く聞かれない。全国的に例年より高水温期は短く(最高水温も低い)、種苗成育は大きなトラブルないまま終了した。次シーズンのマダイ種苗生産量は、マダイ養殖経営が好転しない限り大幅な増産は見込めず、現状では今シーズン並みのスタートではないかと思われる。

<トラフグ>
養殖用種苗尾数 1,035万尾 ( 昨対18%減少)
年明け1月までの早期種苗は3社で18万尾出来たが、出荷は1社5万尾のみとなり、昨年導入尾数の19万尾を更に下回ったため、来期からは早期種苗は受注生産のみとなるものと思われる。
4月以降出荷については、各社共12月下旬から採卵準備に入り、受精卵の池入れ完了は2月中旬であった。このように、種苗業者が低水温期での生産を延期することでの加温用燃料の節約や採卵用親魚尾数の減少等のコストダウンを計ったことが、今期の特徴であった。
各社とも昨年比で10~20%減で生産計画した。昨年は2月中旬から入った予約注文も、今期は遅れ気味であり、ようやく引き合いが強くなった5月中旬には種苗不足という展開となった。結果として種苗生産業者は近畿大学・長崎種苗・大島水産種苗等(民間 18社、 公的 3事業場)で昨年より1社減少し、養殖用種苗尾数は昨年比18%減の1,035万尾であった。また、今期は昨年にも増して歯切7cmUPでの出荷を希望する養殖業者が多くなった。
販売価格は6cm up @95円・ 7.5cm up @105円~110円(歯切り+10円~13円)であった。
天然親魚からの受精卵は昨年より10日早く3月20日に熊本県(天草)で5kg採卵され、5社(長崎4社・熊本1社)が仕込んだ。受精卵価格は80万円/kgと昨年並みであった。受精卵の導入傾向は養成親魚由来が主体となっているものの、天然親魚由来の種苗にも一定の需要がある。なお、今期天然受精卵を仕込んだ業者は昨年比2社減となった。

<ヒラメ>
養殖用種苗尾数 693万尾 ( 昨対22%減少)
種苗生産業者はまる阿水産、日清マリンテック等(民間16社 、公的7事業場)で昨年比民間5社減となり、養殖用種苗尾数は昨年比22%減の693万尾(年内106万尾、年明け587万尾)であり、このうち67万尾が自家養殖用であった。昨年の韓国ウォン暴落後の韓国産成魚大量輸入と価格下落の影響で国内成魚の出荷が進まず、池が空かないことが大きく影響した。そのため年内は小ロットでの稚魚導入となり数量は低位で推移した。ウォンが少し戻し、韓国産の輸入が落ち着いた春先から、成魚の出荷とともに順次池入れが進んだが、主産地大分県での稚魚導入の抑制や廃業の結果、昨年にくらべ大幅減となった。一部業者では新型連鎖球菌症やエドワジエラ症等、疾病による歩留まり低下を見込んで導入尾数を増加する傾向もあったが、韓国ウォンがリーマンショック以前の相場に戻り、国内景気が好転しないかぎり、養殖業者の池入れ意欲増進は期待薄と思われる。その上、大分県では準大手陸上養殖業者の今期限りでの廃業情報もあり、10万尾以上の種苗需要減の可能性もある。

早期物を除く年内の種苗浜値は7cm up 90円/尾で、年明け3月以降は80円/尾であった。ただし池入れ意欲が低いことが影響し、10cmupの種苗もあり浜値9.5円/cmに抑える動きもあった。

<シマアジ>
養殖用種苗尾数は337万尾(昨対17%増)
マダイなど養殖魚の魚価低迷や販売不振が続くなか、シマアジ魚価はここ数年安定していることから種苗の需要が高まり、種苗生産シーズン前には多くの注文や問い合わせがあった。これを受けて、例年通りノグチフカが秋口に採卵したのをはじめ、前年より増産計画した業者もあり、ACN事前集計では約360万尾の出荷が予想された。しかしながら、マダイ種苗の生産時期と重なることから急な増産は難しく、一部業者の不調もあり当初の予想尾数には少し及ばなかったものの、近畿大学、マリーンパレス等(民間6社、公的1事業場)で養殖用種苗尾数は昨年比17%増の337万尾となった。ここ数年の種苗供給尾数は不足気味であっただけに、今期稚魚が出荷される2~3年後の相場には少なからず影響を与えると見られ、来シーズンの種苗需要も含めシマアジの動向から目が離せない。

文中社名敬称略

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