2010年アルテミア耐久卵の供給見通し

2010年アルテミア耐久卵の供給見通し
米国産:湖上収穫が多く、高ふ化率に期待
中国産:ふ化率90%卵は前年比1割減か

2010年1月19日
太平洋貿易株式会社
代表取締役社長 田嶋 猛

北京オリンピック開催の2008年は、日本におけるアルテミア耐久卵輸入史上初めて、中国産の数量が米国産を上回った年だった。しかしながら、2008年秋収穫の米国グレートソルトレーク(GSL)産の孵化率が回復したのを受け、2009年の米国からの輸入量は、11月末までに前年比175%の約29トンとなり、中国産を再び大きく上回った(表1)。 GSL産人気の根強さを改めて見せつけた格好だが、一方の中国(渤海湾)産も 約14トンと全体の1/3を占め、すでに日本の需要者の間で一定の評価を得ていることを窺わせた。
こうしたことから今回も、米国GSL産と中国渤海湾産の二本立てで、今期の供給見通しをお伝えしたい。なお、例年、新物の輸入は、中国産は1月から、米国産は2月末から始まる。2007年~2009年の月別輸入数量で見ると3~5月に輸入のピークがあり、6月までに年間数量の70%以上を輸入していることが分かる(図1)。

<備考:本レポートは(有)湊文社発行月刊アクアネット2010年2月号に掲載されています。>


米国GSL産の状況

ここ数年のGSL産アルテミア耐久卵は、ふ化率90%以上の耐久卵が減少傾向にあるため、種苗生産対象魚種にもよるが、「ふ化率90%以上」と「ふ化率85%以上」を併用するユーザーも出てきている。また、上記の傾向を販売前に十分に説明することで、ふ化率のクレームはかなり解消されてきており、昨シーズンのGSL産は数量・品質ともにほぼ満足のできるものだったと思う。
現地からの情報によれば、今シーズンの例年通り10月1日(2009年)に漁解禁。その直前の湖水は、昨年同様、約40年前の最低水位まであと3フィートという水準であったが(写真1、2、3)、収穫は順調に進み2010年1月15日時点 で、1924万ポンドと昨年の終漁時の1939万ポンド(バイオマス=ウェット状態) に迫っている(表2)。今シーズンの特徴は、湖上での収穫割合が湖岸よりも多いこと。現地では、湖上で収穫したものの品質は湖岸や池で収穫したものよりも良いといわれているので、高ふ化率卵を期待したい。


中国渤海湾産の状況

渤海湾沿岸の塩湖では、今シーズンも9月(2009年)から本格的な収穫が始まり、10~12月に生産のピークを迎えたが、その生産量はここ数年減少傾向である。・アルテミア耐久卵の相場が低迷しているため、塩湖を以前のエビ養殖池や塩田に戻したところが増えたのが主な理由で ある。このようにして生産調整を行っても、ロシアなど旧ソ連圏からそれ以上の安価なアルテミア耐久卵が供給されるため、相場は上向かず、さらに減産傾向が続くという図式になっている。それらの商品はふ化率70~80%で、主に中国や東南アジア等のエビ種苗生産に使用されている。
現地の情報では、渤海湾沿岸でのふ化率90%以上の生産量は昨シーズンに続き減少気味で、約10%減少の70トン程度と言われているが、同水準の品質規格が求められるのは日本など一部の市場だけなので、米国GSL産がよほどの不作・不良にでもならない限り、その程度の減産で流通価格が大きく変動することはないだろう。ちなみに、中国内のもう一つの産地である内陸部の青海省の塩湖では、水質汚染のため収穫量が減少し、収穫卵も経時的な品質劣化が著しく、市販は困難な状況にある。

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