中国ハタ類の養殖事情 「養殖ハタ類相場上昇を受け、種苗価格は昨年より高値推移」

平成22年7月7日
太平洋貿易株式会社
田嶋 猛

中国ハタ類の養殖事情
「養殖ハタ類相場上昇を受け、種苗価格は昨年より高値推移」
原文 http://fishery.00968.com/content.php?title=14021 2010-03-17 を和訳

ハタ類は脂肪分も低く、高蛋白質の高級魚として、香港、マカオあたりでは中国四大魚のひとつとされている。ただし熱帯性の魚で、生育条件に水温等の制限があり、養殖地域は主に海南省、広東省および福建省の一帯に集中している。中国で一般的に養殖されているハタの種類はアオハタ、アカマダラハタ、タマカイ、スジアラ、キジハタ、オオモンハタである。

2008年の経済危機後、昨年来ハタ類の価格は上昇している。具体的な例としては500-750g/尾のアオハタの価格は上半期に30-35元/500g(\840-980/kg)だったが、年末には50元/500g(\1,400/kg)の最高値をつけた。アカマダラハタは500g/尾以上の物は上半期に60元/500g(\1,680/kg)だったが、年末年始にかけて60-63元/500g(\1,680-1,764/kg)に、スジアラでは500g/尾 以上で4-8月頃80-90元/500g(\2,240-2,520/kg)だったが、年末から現在にかけて120-130元/500g(\3,360-3,640/kg)に上昇した。タマカイは出荷サイズが大きく、一般的に7.5-10kg/尾、価格は45-50元/500g(\1,260-1,400/kg)と比較的安定している。養殖歩留まりが低くなければ、利益の取れる魚種と言える。

近年、中国におけるハタ類の稚魚の生産規模は急速に拡大しており、技術力も向上している。大部分の種苗場では十分な供給が可能で、台湾や東南アジアにも輸出している。但し、以前に比べて病害の発生が問題となってきている。2009年の種苗価格は2007-08年より下落したが、今年は昨年同期と比べ回復しつつある。海南省のアオハタの種苗価格は昨年2-3cmサイズで0.2-0.3元/尾(\2.8-4.2/尾)だったが、今年は0.9-1.0元/尾(\12.6-14/尾)になった。深セン(センは「つちへん」に「川」)のアオハタ種苗価格は概ね全長1cm当り1元(\14/cm)で海南省よりも高い。 総じて、今年の種苗価格は昨年同期より高い。その理由としては、去年、特に年末の魚価が高くなり、養殖に対する関心が高まったことや、養殖業者が生産時期を早め適水温に達した時点で速やかに養殖を開始し、今年の冬場の水温が低下前に出荷することで、リスクを回避したことが挙げられる。よって、早期の稚魚、受精卵の価格が後期より高めである。

その他のハタ類では、スジアラが去年2-3cmサイズで0.6-1.0元/尾(\8.4-14/尾)。今年は3月中下旬に稚魚の出荷が始まる予定であり、種苗業者の予測では2-3cmサイズは2元/尾(\28/尾)。アカマダラハタの去年の価格は2-3cmサイズで0.8-1.3元/尾(\11.2-18.2/尾)で、今年は4 月末から5月の始めには出荷の予定。キジハタは主に輸入受精卵で種苗生産をしている。市場規模は小さく、去年の下半期に5-6cmで出荷した業者があり、価格は一般的に6元(\84/尾)以上、ただし越冬できる稚魚の数は少ない。去年のタマカイの種苗価格は3cmサイズで5-10元/尾(\70-140/尾)、15-20cmサイズで70-80元/尾(\980-1,120/尾)。今年は3cmサイズの種苗はまだ出荷されていない。海南島で越冬したタマカイは1.2-1.5kgサイズで、170元/尾(\2,380/尾)、1.5-2.0kgサイズで180元/尾(\2,520/尾)。種苗業者はタマカイの現有越冬種苗にしても、5月頃の3cm種苗にしても、昨年比の価格上昇幅は限定的で2007-08年の水準には戻らないと予想している。

タマカイとその他のハタ類に大きな違いがあることを説明しておかねばならない。一般的なハタ類の出荷サイズは500g-1kg/尾 であり、資金が不十分な養殖業者や養殖条件の良い業者は5-6cmの種苗を買い付ける。しかし、資金が十分な養殖業者は養殖リスクの回避、生育時間短縮のため、10cm以上の大きめの種苗を買う傾向がある。タマカイの出荷サイズは他のハタ類より大きく、養殖期間も長く(一般的に2年前後)なるが、500gサイズ以上になると成長が速くなるため、500g/尾以上の稚魚を導入する養殖業者もいて、養殖期間の短縮でリスクを回避している。

タマカイの高成長の特性を利用し、ある稚魚場はタマカイと別のハタ類と掛け合わせて、新種の開発に取り組んでいる。聞くところによれば、交雑種の養殖及び出荷はすでに始まっているようである。例えば、タマカイとアオハタ、タマカイとアカマダラハタの交雑種は、成長速度と抗病性には一定の優位性はあるものの、品質の面では市場が受け入れるかどうかはまだ不明である。

台湾では昨年の水害で水産業も大きな損失を被った。台湾のハタ類産業も例外ではなく、大量の親魚、成魚の流失で、短期間で水害前の水準に回復することは困難である。(水害による在庫の減少を受け)台湾業界内では今年のハタ類の種苗、成魚共に価格の上昇を予測している。このことも今年の大陸のハタ類の種苗価格が昨年より高い理由の一つとみられている。しかしながら、現在の大陸の種苗及び成魚の供給は台湾には依存しておらず、台湾の水害も限定的で、業界全体に影響することはないとの見方もある。

以上

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