ACN 養殖概況

2008年1月

<マダイ>
2007年春先1,000円/kg程度であったマダイ相場は夏季以降、荷動きの悪さから下がり続け、9月には700円/kg、2008年1月時点では、600円/kg程度にまで下落。原因としては相場の牽引役であった、韓国向け活魚輸出※の減少が主で、次に相場急騰による国内流通量の減少が従であると考える。現時点でも韓国向けとして養成した2kgupの大型サイズを抱える業者もかなり多く、生簀が空かずに稚魚導入を見合わせるという状況が発生している。このような状況下に生餌高騰も加わり、生産意欲の低下は著しく、2008年シーズンの種苗導入に大きな影響を与えることは確実と見られる。
2007年の生産状況は、2006年ほどではなかったものの、地域によってはイリドウイルス症被害の発生や、新たに連鎖球菌症の発生も見られた。
※韓国向け輸出
2005年中国から韓国に輸入された食品に禁止薬剤が検出され、中国産食品離れが韓国で起こった。中国産食品の輸入検査が厳格となり、マダイも輸入検査に1週間かかるようになった。折から、韓国Wonは対日本円で20%近く上昇していき、それまで2kgupの大型主体であったが1kgサイズまで拡大していくと共に単価も上昇していった。輸出量は2006年3月をピークとして7月に掛けて一気に減少したものの価格の上昇基調は継続した。その後、中国産マダイの値ごろ感から(輸入検査は現在も厳しいが)日本産からの中国産へのシフトが進行した。その上、中国産中間魚の韓国内での養殖増加や韓国Wonの下落も加わり、日本からの輸出価格が下落していったと推測する。尚、輸出量は2005年2,875トン、2006年4,496トン、2007年(11月まで)3,044トンであった。

<ハマチ>
2007年のモジャコは、一部地域で不漁が続いたが、採捕サイズが小さかったため、概ね必要数量の確保が出来、ほぼ2006年並みの約2,000万尾が導入された模様。
成魚相場は、天然物の漁獲増を受け、夏場の相場回復もなく、現在550円/前後で推移している。当初予想されたような大きな相場下落は見られなかったものの、昨今の生餌不足(通常餌になっていたサバ等の鮮魚が、食用としての輸出や養殖マグロ生餌として使用)による価格の上昇、主原料である魚粉の高騰による配合飼料が大幅な値上がりの影響で、生産コストが大幅に上昇し、経営を圧迫している。生産業者の経営力も限界にきており、早急な相場回復が望まれる。

<カンパチ>
昨年度のカンパチ成魚相場は一昨年度末からの相場低迷が継続した為、低調であった。9月には四国で900円/kg、鹿児島では850円/kgの昨年度最高値を記録したが、その後需要がハマチにシフトした為、相場は下落し、現在800円/kg前後で推移している。
魚病においては稚魚導入当初の4月より、類結節症よる被害が甚大であった。この背景には、類結節症の治療薬として一般的に使用されているアンピシリンの投薬効果が確認されなかった事が大きく影響した。8月からは、例年のようにノカルジア症、新型レンサの発症による罹病魚が多く確認され、その反面、鹿児島県錦江湾では例年に比較してハダムシ寄生による被害が少なかった事が特徴的であった。
また、昨年度は生餌価格の高騰、生餌の極端な品不足(特に鹿児島地区)になった事等が影響し、これまで生餌主体のモイストペッレットの使用が中心であったが、EP飼料や水分含量の高いソフトタイプEPに切り替える業者が増加した。

<ヒラメ>
1,800円/kg前後で推移してきたヒラメ相場は、2007年秋から年末に向けて1,600円/kgと下がってきた。夏場は韓国国内でのヒラメ需要が多く、日本向け出荷も少なかったようだが、2007年7月をピークに年末にかけて韓国Wonが一気に15%下がり対日輸出が増えてきたため、国内相場が下がったものと思われる。通年出荷している業者はコンスタントに出荷しているが、全体的に年末の荷動きは良くなかった。年明けの相場では1,500円/kgとなっている。
魚病では今年も低水温期のVHSが懸念されており、夏場の高水温期にはP型と呼ばれる新型の連鎖球菌症が多く見られた。連鎖球菌は高水温を好むため、今後、温暖化等で海水温が上昇すれば、さらに被害が拡大することや、他魚種への感染も予想される。

<アユ>
今年度のモジャコ導入量は、一部地域で不漁が続いたが、採捕サイズが小さかったため、尾数的には概ね必要量の確保が出来、ほぼ昨年並みの約2000万尾の模様。今年度の中間魚相場は昨年に比較し、かなり回復したが、それでも採算が取れる相場とは言えず、中間魚相場の主要産地である長崎県内生産者のモジャコ導入意欲はかなり低いものとなっている。成魚については昨年同時期、カンパチの相場高騰に連動した形で、相場が好転し、3歳魚が800円/kg前後の相場を維持していたが、今年度は春先における天然ブリの豊漁の影響を受け、夏場に向けた相場回復がみられず、現在相場は、600円/kg台と低迷している。また、新物の出荷が始まったものの、生産物の売れ行きは鈍く、今後浜相場は下落していく事が予想される。

<カンパチ>
今年度、稚魚、中間魚導入尾数は、1,000万尾前後とほぼ昨年並みの導入量となった模様。今期のカンパチ浜相場は昨年度末から安値が続いており、800円/kgを割る厳しいスタートとなった。8月中旬より品薄状態となり、それに伴い相場は徐々に上昇し、9月には900円/kgとなったものの、先行き不透明な部分が多く、今後も厳しい状況が予測される。
魚病においては稚魚導入当初の4月より、類結節症よる被害が大きく、8月になると、例年のようにノカルジア症、新型レンサの発症による斃死魚が多く、飼育面でも厳しい状況となっている。

<アユ>
2007年の生産量は若干の減少と思われる。市場価格は入荷量が減ったことにより上昇した。しかし、飼料や資材の値上げ分をカバーできるまでには至っていない。注目すべき点としては売れ行き不振で在庫過剰の冷凍アユが2007年後半に一転品不足状態となった事である。この買いは中国産を扱っていた大手水産会社が国産に切り替えたためである。このように需要は増えたものの生産は増加しておらず不足状態は少なくとも今年の夏まで続くと思われる。
昨年11月21日に始まった琵琶湖の特別採捕は順調に採捕され予定数量の40tを11月中に採捕完了した。全般的に1g以下サイズで揃っており近年になく良い種苗であった。そして、人工種苗についても大きなトラブルもなく順調に池入れされているようである。
今期は冷凍アユ需要の増加により市場相場が上昇する可能性があるが、極端な高値は期待できず、歩留まり向上でコストアップ分をどれだけ吸収できるかが重要なポイントとなるであろう。

PAGE TOP