2003年9月-2004年8月養殖用種苗生産動向

養殖用種苗生産速報 2003年9月~2004年8月 ACN総評

1.マダイ
種苗生産は3年連続減少するが、成魚価格回復傾向も頭打ち
養殖用種苗出荷尾数は4000万尾(生産尾数4600万尾 民間27社の推定尾数)で昨年より900万尾(18%)・5業者減少し、直近3年間で稚魚の出荷尾数は
45%減少したことになる。昨年末から価格上昇の傾向がみられ1.5kgUPの大型
魚の浜値は650~700円/kgと上昇しているものの1kgサイズは500~550円/kgで横這い状態が続いており養殖場の体力向上にもう少し時間がかかりそうである。そのような事情を反映してか種苗業者自身や養殖業者に委託しての夏越したて仔の生産も当たり前になっており、養殖業者の体力低下がもろに種苗業者の負担になってきている。このところ高い評価の近畿大学の出荷尾数は約800万尾であった。
稚魚価格は東高西低の模様で四国での価格は9~10円/cmであったが九州では混乱していた。

2.トラフグ
早期物は順調に推移するが終盤は低調、中間魚に注目
養殖用種苗出荷尾数は1,110万尾(生産尾数1,305万尾 民間24社・公共2事業場の推定尾数)で昨年より240万尾(18%)減少した。早期ものは南宇和など水温条件の良好地域のみならず長崎など低水温海域でも導入した。陸上養殖はホルマリン問題以降急増傾向にありヒラメ陸上養殖業数社が新規にトラフグを導入した。
種苗価格は昨年12月までの超早期物の浜値は105~110円/尾、サイズ6cm up、年明けから100~105円/尾と5円安となっている。昨シーズンに比べると大幅な値引きもなく堅調に推移し5月中旬には不足気味になり6月の出荷が期待されたものの尻すぼみ状況で7月半ばに種苗出荷は終了した。海面養殖の歩留まり低下は深刻になっており、それに伴い中間魚の需要は活発であった。昨年11月出荷の中間魚浜値は550~660円/尾 サイズ250~300g/尾 (キロ単価 2,200円)。
昨年に比して種苗導入数が減少した要因として・種苗業者の廃業による種苗供給量の減少 ・養殖密度低下による導入量減少 ・中国産中間魚の輸入増による国産需要減が考えられる。一方で国内種苗業者への11月出荷の中間魚注文が増加する傾向がある。

3.ヒラメ
成魚荷動き悪く、種苗導入数量 更に減少
年内(9月から12月末)のヒラメ稚魚の出荷尾数は約250万尾であり通期の養殖用種苗出荷尾数は800万尾(生産量860万尾 民間22社の推定尾数)と昨年より150万(16%)減少し最低記録を更新した。平成5、6年頃の経営体数70社、出荷尾数約2300万尾と比べると双方とも1/3に激減したことになる。
統計上の養殖生産量は平成9年の8500トンがピークで平成14年には6200トンに減少しており養殖業者・種苗業者の魚種転換・廃業の傾向が更に加速していることが推測される。

稚魚の価格は7cmupが主流で浜値85~80円/尾で始まり12月で5円安、年明けの3~4月で70~65円/尾であった。成魚浜値が1200~1400円/kgと低迷していることから数社が生け簀の一部にトラフグを導入した。 
韓国産ヒラメの現地浜値は9,500~11,000Won(950~1,100円)であり韓国養殖業者も経営的に限界状態で忠武、麗水方面では廃業する業者もあり、養殖中核地域として済州道が益々クローズアップされてきている。ここ数年の日韓双方のヒラメ養殖業者の我慢比べ状態はまだしばらくは継続しそうである。

4.シマアジ
順調な生産 種苗導入一段落後様子見
ここ数年の種苗供給量不足を反映してシマアジは唯一人気魚種となっており、今シーズンも各社が一斉に年内採卵し種苗生産を開始。VNN等の重大なトラブルはなく沖だしは順調であった。養殖業者サイドはいち早くこの情報を入手、2年後の成魚価格の下落を懸念して昨シーズンまでのような活発な引き合いはなかったものの潤沢な種苗量を反映して養殖用種苗出荷数は420万尾(生産尾数650万 民間7社・公共2事業場の推定尾数)と昨年より110万尾(35%)増加。種苗導入量が500万尾以内ということで2年後の成魚価格下落の懸念はひとまず払拭されたようである。近畿大学が150万尾出荷したことが注目される。一方、種苗場にてイリドワクチンを接種し中間育成しているものもあり、その動向も注目される。

5.アユ
アユの需要は減少傾向にあるものの、放流量は対前年度103%(平成15年度)
養殖生産量は対前年度97%(平成15年度)となっている。放流で1,197トン・約1億2000万尾、養殖(成魚出荷)で8,000万尾(7,000トン生産・90g/尾として)合計約2億尾が出荷されている。もちろん病気の被害・他での減耕を考えれば、種苗段階では、20~40%増が流通していると思われる。平成16年の傾向として放流は、
琵琶湖産アユが減り人工種苗アユの需要が急激に高まったように思われる。この要因としては、冷水病対策、昨年来のコイヘルペスでの河川汚染予防、河川でのアユの再生産性の問題、民間・公共機関共に前シーズン豊作だった事が考えられる。成魚出荷池でも、
年明けの琵琶湖産種苗の供給量が少なかった事もあり人工種苗の流通が増加している。
一方、今シーズン築地などの市場流通価格が低迷しているが、人工種苗生産技術の発達
により早い時期に大きなアユが出荷された事、春先に子持ちになってしまったアユが出回った事が、原因であるとの声も大きい。この事から、価格安定のため市場には流通を重視した季節感のある春から秋の出荷時期に安定した成魚生産が可能な種苗生産が望まれる。

6.その他
ひれ物としてはイシダイ・オコゼ・カサゴ・クエ・マハタ・ブリ・カンパチ・ホシガレイ・マツガレイ・マツカワ・ウマズラ・スズキ・イサキ・クロソイ・ミルクフィッシュ等が生産されている。

<敬称略>

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