ACN養殖用種苗生産速報

ACN養殖用種苗生産速報  2005年9月~2006年8月

<マダイ>
養殖用出荷尾数は5,500万尾(昨年比13%増)
春仔は大手種苗場の生産不調の情報と2年にわたる生産調整と韓国向け輸出急増によるマダイ相場の上昇で導入意欲が高まった事などから、4月頃から引き合いが活発化し先物種苗の仮発注等も発生する状況で、一時は種苗不足が発生するかとの推測も生じたが、結果としては5,500万尾(昨年4,850万尾・+13%)で養殖業者もほぼ充足している状況である。
種苗生産業者は近畿大学(870万尾)山崎技研、バイオ愛媛、ヨンキュウなど30社(民間27社・公共3事業場)であった。
夏越分の需要見通し
上記の様に春先の種苗が充足している事や、冬場の高値相場を期待して在庫を抱えている業者が有る事等から、結局需要は例年並みとなる見通し。また、夏越分の在庫は瀬戸内地区でやや多くなっているが、他の大手は例年通りの沖出し数量で予約注文分の生産のみ。但し、この夏はイリドウイルス被害が例年より多く、養殖業者及び夏越分を在庫している種苗業者とも問題は深刻である。この事から、斃死による不足分を補う為、種苗需要が高まる可能性はある。
来年の春仔については、このまま年末~年明けまで成魚相場が高値で推移していれば、増産したいという考えの養殖業者もあるが、現時点では各業者とも明確な方針は立てていない模様。

<トラフグ>
年内出荷無し1月出荷分も低迷
年内(2005年10月~12月)の種苗生産業者は長崎種苗をはじめ10社であったが1社は生産を中断し実質9社であった。年内出荷は昨年に引き続きゼロ、年明けの出荷尾数は約30万尾で昨年比55%と減少した。
年越し成魚在庫過去最高
年明けの出荷サイズ成魚の在庫は長崎県(約100万尾)を筆頭に合計160万尾に達した。この要因は中国産の活魚(国内蓄養含む)及び〆(鮮魚)の出荷・加工に2月中旬までかかったことにある。 当然国内物もこの影響を受け浜値1,500円/kgまで下落した上、出荷が後回しになった漁場もあったようである。
このように成魚の出荷に時間を要したため、養殖用種苗も4月の出だしは低調であった。しかし6月中旬に至り種苗の不足感から引合いは一気に活発化した。
2006年の養殖用出荷尾数は約1,140万尾であった。種苗生産業者数は21社(民間 19社・公共2事業場)であった。
価格は堅調に推移
種苗価格は昨年同様、4~5月・6cm Up浜値105円~110円/尾、6~7月・6cmup・90~100円/尾(歯切り+10円up)出荷数量の増加の理由は①養殖場での加工、産地直送の刺身・鍋セットの販売増加、②国内産使用のとらふぐ料理のチェーン店から予約など安心・安全にこだわる店の増加等である。
数量は少ないものの陸上養殖向けの陸上タンク出荷分は7月末9cmup・130~140円(歯切り含)、8月末170円(同)。
中国産成魚の動向
中国内では基本的にフグ食禁止で日本か韓国に輸出せざるを得ない事情(富洋通商㈱ 磯社長)やポジティブリストの影響で減少するという見方の一方で、それまでに準備が整うという見方もあり動向を見通すのは困難である。いずれにしても9月から1kgサイズでの出荷、安全、肉質、白子等品質用件が重要となる。
*某輸入業者の話では「本年8月試験的に遼寧省から輸入した5~600gサイズ冷凍物は中国での輸出検査に10日、日本での輸入検査に14日要し、価格は通関後1600円/kgであった。しかも中国内での検査に合格した養魚場は10社中3社しかなく、本年は商品の手当てが困難である。検査日数が掛かるため鮮魚・活魚の輸入は見合わせ中」とのことでした。

<ヒラメ>
引合い増加、時すでに遅し
出荷尾数は760万尾(昨年800万尾・-5%・民間20社・公共2事業場)と昨年に比べ若干減少した。種苗場においては例年と同様に奇形の防除が最重要課題となっているが、日齢30日までの原因不明の大量斃死被害を受けたところもあった。また、1~2月の出荷種苗では一部の地域でVHS症と思われる大量斃死が発生する漁場もあり、今後は3月中旬頃の海水温の上昇(14~15℃)を待っての種苗導入が検討されるところである。
種苗価格は年末が7cm UP・浜値80~85円/尾、年明けは浜値75円/尾前後で推移した。例年同様韓国産成魚の輸入増で国内産の動きが鈍く池が空かない等の理由で、年末の稚魚導入は低調であったが4月初旬になり韓国産の輸入激減で状況は一変し引き合いが活発化したが種苗生産は終盤にきており増産するには至らなかった。
種苗導入は増加傾向
成魚価格は円安ウォン高、韓国内での需要増などにより4月以降相場は上昇し続け、キロ物は在池量こそ少ないものの、9月上旬で2,000円/kgを超えた。そのため、昨年とは逆に養殖業者の種苗導入意欲は強くなるものと思われる。
種苗価格については種苗業者は、重油の高騰などにより本年内出荷分は7cmupサイズで90円/尾、年明けは80円/尾で販売したい意向。早期出荷のフグ種苗需要が年々減ってきていることもヒラメ種苗生産へのシフト要因になるものと思われる。

<アユ>
依然として減少傾向
アユの生産量は減少傾向にあり、2005年養殖量は対前年度89.3%、放流量は対前年度94.6%と減少している。この減少傾向の要因としては、養殖用は需要量の減少から市場価格が低迷している事と、病気による歩留り低下が挙げられる。放流用は、アユ釣り人口の減少による河川漁協の収入低下が一番大きい。
河川放流量に占める湖産種苗の割合は年々減少し23%(平成17年度)まで落ち込んだ。これは、冷水病対策として自県産の人工種苗放流を推進している県が増えてきたためと考えられる。また、徐々にではあるが割合的に増加傾向にあるのが海産・河川産の種苗である。これらは人工種苗と比べて姿形が良いことや友釣りでの追いが良い等から割合を増やしているが、種苗採捕量が安定しないため18%(平成17年度)に留まっている。
養殖生産量が減少していくなか、大手養殖業者の中には規模の拡大を図り生産原価を下げようとする業者もある。生産量の減少以上に養殖軒数は減少しており徐々に寡占化が進んできている。
価格は低迷
今シーズンの市場価格は数量が少ないにも関わらず低迷して推移してきたが、8月に入り極端に数量が減少したため一転価格が上昇した。このようにある一定数量以下まで減少すれば価格上昇の余地は残されているが、極端な高値は期待できない。

以上のような事からアユ養殖業界は以前にも増して厳しい状態となっている。このような状況から養殖用は歩留まり向上と計画生産、放流用は川鵜対策等河川での歩留まり向上策が必要と考えられる。養殖用種苗生産者数は14社(民間8社・公共4事業場であった。

<シマアジ>
青物価格の上昇も種苗増産には間に合わず
春先からのカンパチ、ヒラマサの価格上昇によりシマアジ種苗導入意欲が上昇してきたが時すでに遅く種苗業者が増産可能なタイミング過ぎており、昨年生産の中間魚も出荷されたものの養殖用出荷尾数は260万尾(昨年325万尾・-20%)と過去最低となった。生産業者数は8社(民間5社・公共3事業場)であった。

<文中社名敬称略>

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