養殖用種苗生産速報 2004年9月 ~ 2005年8月

1、マダイ
出荷数は回復傾向だが価格は横這い
2年連続して減少を続けた養殖用種苗出荷尾数は4850万尾(民間25社の推定尾数)で昨年比850万尾(21%)回復した。昨年は台風被害で数社が甚大な被害を受けたもののイリドウイルス症被害も比較的軽微でしかも無償添付出荷尾数も10%を超える場合もあり売上出荷尾数以上に在庫はあるものと推定される。近畿大学、山崎技研、バイオ愛媛、ヨンキュウなどマダイ種苗大手は出荷まで一貫生産管理しているが、別途分業生産方式もあり種苗業者の経営方式にも変化の兆しが見える。
成魚価格はキロ物(1kg/尾)600~650円/kg(2003年に比べ100~150円/kg up)で安定している。夏季に在庫減少する大型サイズ(2kg/尾)も従来なら価格が上昇するところであるがキロ物同等650円/kgである。その一方で福岡、広島ではスズキに人気が出てきており価格もマダイを追い越し850~950円/kgまで上昇してきている。

2、トラフグ
終盤に来て引き合い増加で不足感
養殖用種苗出荷尾数は980万尾(民間26社・公共1事業場)で昨年比130万尾(13%)減少し、1昨年比370万尾の減少となった。このうち長崎県の業者が長崎種苗、大島水産種苗など12社で出荷尾数513万尾(52%)であった。
本年の種苗需要は早期物の動きが鈍くそのため種苗場のタンク繰りがつかず、次のラウンドの仕込に支障が起こり結果として後半の生産量が減少した。其処に来て養殖魚者からは例年通りの注文が出たため6月半ばから各社とも新たな注文は断らざるを得ない状況となった。本年の種苗の全体的は評価は昨年に比べて今一歩であり特に海面生簀では現時点で全滅に近い被害が出ているところもある。
価格は昨年同様、年明け 浜値7~9cmup 100~110円/尾、6月以降80~90円/尾と堅調に推移した。一部安価な稚魚もあったが数年前のような50%無償添付というような実質的なダンピングはなく価格は落ち着いてきている。一方8~9cmと大きめサイズを希望する養殖業者が増加してきており運送時の噛み合い防止のため歯切りする場合は10円/尾upとなっている。
中国では北部の中間魚を南部の福建省でも養殖しており昨年までは低水温のため輸入ストップしていた年明けも本年は輸入されキロ物浜値2000円/kg以下で取引された。中国産中間魚の品質は不安定で国産を見直す動きが出てきている。

3、ヒラメ
安定してきた種苗の需給バランス
養殖用種苗出荷尾数は年内250万尾、年明550万尾で昨年同様800万尾(民間22社の推定尾数)であった。22社のうち50万尾以上出荷した業者はまる阿水産、長崎種苗、大島水産種苗などであった。本年度の種苗需給はバランスがとれており種苗業者と養殖業者の関係も密になってきており数年前の様に販売の当てもなく生産する業者は淘汰されてきている。
価格は9月の超早期ものは別として10月~1月は7㎝ up浜値80~85円/尾で推移し2月以降は重油の高騰もあり7㎝ upで昨年より5円upの浜値75円/尾で流通した。今後のヒラメ種苗生産の課題は「奇形魚の発現を抑え出荷歩留まりを向上させること」である。
養殖ではホルマリン問題以降一時ブームになったヒラメ陸上養殖のトラフグへの転換も一段落し、逆にヒラメに戻り始めている。その主な要因は①価格:トラフグ価格の下落(2500~3000円/kg)、ヒラメ価格の下げ止まり(1300~1500円/kg)②生産効率:トラフグの養殖密度の低さ、稚魚から出荷までの期間(ヒラメは1年、トラフグ1.5年)③疾病:トラフグの寄生虫である。

4、シマアジ
成魚価格暴落で引き合い激減
養殖用種苗出荷尾数は325万尾(民間7社・公共3事業場の推定尾数)昨年比95万尾(22.6%)減少した。昨年秋から成魚価格の下落が始まり1500円/kgで安定していた成魚価格が年末には1200円/kgとなり年明け後も続落し1000円/kgを割り現状ではシマアジ流通はストップ状態となっている。
その要因として考えられることは「シマアジ市場が形成されつつある時点で他の青物に比べて2倍のシマアジ価格を市場が拒否した」からではないだろうか? この状態が続けば成魚サイズは大型化が進み今以上に販売し辛くなることが懸念される。

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