ACN養殖用種苗生産速報

2009年9月~12月出荷尾数、2010年1月~ 予測

<マダイ>
昨シーズン(2008年9月~2009年8月)は、成魚の販売低迷の影響を受け、養殖用種苗尾数は4,330万尾(前年比26%減)となった。その後もマダイ養殖業界の経営改善は見られず、養殖業者の種苗導入意欲は依然として低水準である。
夏越し種苗(立仔)の2009年9月~12月の販売数量は518万尾で、種苗業者での在庫は70万尾程度と推察される。今シーズンのマダイ種苗生産もスタートし、2009年9月~12月での生産は近畿大学、山崎技研など15社で2,690万尾(沖出種苗含む)であった。実際の養殖用種苗としては、選別等により相当数が省かれ、約半数になると思われる。昨シーズン年並みの仕込み量でスタートしたが、今後の増加要因がなく最終的な養殖用種苗尾数としては減少すると思われる。

<トラフグ>
2009年9月~12月に2社が採卵し、早期種苗の生産は近畿大学の15万尾だけであった。そのうち年内出荷は6万尾で、依然として早期物を導入する養殖業者は少ない。早期種苗生産は、小ロットのためコスト高となり敬遠されており、本格的な種苗出荷は4月以降に集中すると思われる。 上記2社以外は12月から養成親魚を仕立て、1月上旬準備に入り、2月上旬から採卵となる。採卵に関しては、年内では2社で、他社は12月より養成親魚を仕立て1月上旬準備に入り2月上旬からの採卵となる。その理由は低水温時期を避け、3月下旬から4月上旬沖出しするためである。
年末に懸念された大量の成魚の越年が回避されたことは種苗業者にとっては朗報であった。今後の状況としては、1月~2月採卵分は例年通りで、3月採卵分より生産調整を検討している種苗場が多く、昨年の20%減で生産計画を立てている種苗生産場も数社ある。
中国では、最も人気のない魚種がトラフグと言われており、日本でのトラフグ相場の暴落を受け、中国国内消費に向いた魚種の種苗生産が増加する模様。

<ヒラメ>
2009年9月~12月の養殖用種苗出荷尾数はまる阿水産、長崎種苗など民間8社で昨シーズンより微増の130~140万尾であった。出荷サイズは8~9cm upとやや大型化種苗で、浜値は昨シーズン同様90円/尾である。
成魚の販売は韓国産に押されており、国内相場は韓国産で決まるようである。現在の浜値1,100~1,200円/kgは昨シーズンより高値であるが、種苗から成魚までの生残率の低下で、養殖業者にとって厳しい経営状況が継続している。
今後の種苗導入は昨年池入れが遅れたため、成魚出荷も遅れており3月以降に集中するものと思われる。養殖業者は種苗導入にあたって、韓国ヒラメの輸入動向と国内景気減退の影響から目が離せないところである。

<シマアジ>
例年通り昨年内のノグチフカの採卵に続き、近畿大学や山崎技研も生産は順調である。そして、1月に入りマリーン・パレスも採卵、仕込みを終わっている。
ここ数年、マダイなど多くの魚種で成魚価格の低迷や販売不振が続く中で、シマアジの魚価は安定していたことから種苗への需要が高まり、昨シーズンは幾つかの業者で前年より増産の計画にてシーズン入りした。しかしながら蓋を開けてみると、マダイ種苗の生産時期と重なることから急な増産は設備面で困難であり、さらに一部業者では計画通りの歩留まりが得られなかったこともあって当初予想された尾数には至らなかった。とはいえ前年より増加し、376万尾の出荷実績となった。
今年度も種苗の引き合いが続くと予想される中、大手種苗生産業者を中心に増産体制の動きが見られており、マダイ種苗の更なる減産傾向がシマアジへのシフトを後押ししていると推測される。 その一方で、生産に入ってから急遽注文が弱まったとの声が一部で聞かれ、養殖業者も導入について流動的な面が垣間見られる。また、例年1月以降の採卵状況や歩留まりによって生産尾数が変動していることから、最終的な尾数は計画から前後すると見られるが、昨シーズンを上回る見込みは大きい。
ACNの集計では、民間6社、公的3事業所にて450万尾前後が予想されており、各業者が順調に生産すれば500万尾に達する可能性もある。
シマアジ種苗の増産は2年連続であり、数年後の成魚市況への影響が懸念される。

お詫び: ACNレポート2009年9月(第31号)にてシマアジ種苗出荷尾数を 337万尾と記載しましたが、その後の調査にて民間1社の出荷尾数を実際より少なく集計していたことが判明したため、2009年養殖用シマアジ種苗出荷尾数を376万尾に訂正します。読者の皆様にはご迷惑をおかけしましたことを、お詫び申し上げます。

<クロマグロ>
近畿大学はじめ民間5社、公的2機関が2009年7月以降、種苗生産に取り組み全長40~90mm(30~40日齢)で約13万尾を沖出しした。90日齢(300~500g/尾)での沖出し後の生残率は0~25%であった。

文中社名敬称略

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