2006年9月~2007年8月
<マダイ>
今期相場は、年明けから対韓向け輸出用の2.0kgを中心とした大型サイズで品薄傾向が続いた為、昨年から引き続き1000円/kg前後の高値が維持された。しかしながら春先より、高値による需要の停滞、対韓輸出が2006年より減少したことなどから、徐々に下がり始め、9月上旬時点では700円/kg台前半にまで低下してきており、現在では、高相場の牽引役であった2kg物でも品薄感は無くなってきており、荷動きの鈍化とあいまって、年末に向けた相場見通しには、不安感が漂っている。
今期の生産状況は、シーズン前半では、昨年に引き続き2kgものの品薄傾向が続いた事から、1.0kg前後で中間魚として導入し、2.0kgサイズまで育成して出荷しようとする業者が増え、韓国向け販売に期待する動きがより強まったと言える。
疾病面では、被害は昨年ほどではないものの、今期もイリドウイルスが発生。8月には高知から愛媛にまで範囲が拡大した。一方、昨年まで見られなかった連鎖球菌による斃死が各地で散見されており、輸入カンパチなどから感染した可能性が疑われ、今後の被害拡大が懸念される。また、7月には愛媛・大分で大規模の赤潮が発生し、斃死・餌止めによる成長停滞などの被害が発生した。
<トラフグ>
昨年の成魚の出荷は9月から始まり、海面養殖キロ物 3,000円~、陸上養殖キロ物 4,000円~と順調なスタートを切り10月上旬には海面・陸上ともさらkg当たり500円UPと続伸したが、11月に入ると中国産の輸入が集中し国内産は瞬く間にキロ物サイズで 1,500円/kg(昨年の4割安)へと急落しトラフグ養殖業者に危機感が広がった。 年末が近づき需要が出たところで中国産が減少し価格も手頃になり国内養殖物の引き合いは一気に活発となったものの相場はキロ物で 1,700円~2,000円/kgと若干の上昇に留まった。
価格下落の主因となっている中国産(活魚・鮮魚・冷凍)の2007年の輸入は、相次ぐ残留農薬問題での輸入検査や廃棄処分コスト高で、輸入業者数は減少するものと思われる。一方、中国では1昨年、昨年と仕込んでおり、国内でトラフグ食禁止である以上、日本か韓国に輸出する以外に選択肢はない。そのため、中国側は輸出努力をし、大半の日本国内トラフグレストランチェーンも利益の上がる中国産(産地表示の法的強制力無し)入手のため、現地での養殖管理に努力しているようである。したがって、中国産が廉価で輸入されてきている限り、それと差別化できない限り価格の上昇は望めないであろう。
<ヒラメ>
現在の成魚相場は、キロ物で1,700~1,900円/kg。昨年の2,000円/kg超とまではいかないが、依然として高値で推移している。
昨年からの堅調な成魚相場で、大分県では陸上養殖施設の増設や酸素(液体酸素/酸素発生装置)の導入により増産体制を整えている業者がある一方で、愛媛県では寄生虫症等による歩留まり低下で養殖場を閉鎖する業者もあり、地域により経営状態に格差が出てきている。
酸素導入の主目的は給餌率向上での成長速度アップと収容密度の増加である。そのほか赤潮等発生時や台風等による取水停止、停電による取水ポンプの停止時にも、イケス内の循環ポンプ用電源が確保できれば溶存酸素を維持でき、大量斃死を免れるメリットもある。
<ハマチ>
今年度のモジャコ導入量は、一部地域で不漁が続いたが、採捕サイズが小さかったため、尾数的には概ね必要量の確保が出来、ほぼ昨年並みの約2000万尾の模様。今年度の中間魚相場は昨年に比較し、かなり回復したが、それでも採算が取れる相場とは言えず、中間魚相場の主要産地である長崎県内生産者のモジャコ導入意欲はかなり低いものとなっている。成魚については昨年同時期、カンパチの相場高騰に連動した形で、相場が好転し、3歳魚が800円/kg前後の相場を維持していたが、今年度は春先における天然ブリの豊漁の影響を受け、夏場に向けた相場回復がみられず、現在相場は、600円/kg台と低迷している。また、新物の出荷が始まったものの、生産物の売れ行きは鈍く、今後浜相場は下落していく事が予想される。
<カンパチ>
今年度、稚魚、中間魚導入尾数は、1,000万尾前後とほぼ昨年並みの導入量となった模様。今期のカンパチ浜相場は昨年度末から安値が続いており、800円/kgを割る厳しいスタートとなった。8月中旬より品薄状態となり、それに伴い相場は徐々に上昇し、9月には900円/kgとなったものの、先行き不透明な部分が多く、今後も厳しい状況が予測される。
魚病においては稚魚導入当初の4月より、類結節症よる被害が大きく、8月になると、例年のようにノカルジア症、新型レンサの発症による斃死魚が多く、飼育面でも厳しい状況となっている。
<アユ>
アユの生産量は引き続き減少傾向にあり、2006年の養殖(サイズは80g/尾前後)量は6,266t(対前年度97.3%)、放流(約10g/尾)量は1,049t(対前年96.6%)となっている。この減少傾向の要因としては、養殖用は市場価格の低迷が続いている事と、冷水病やボケ病等の疾病による歩留り低下が挙げられる。放流用は、河川漁協の経営悪化が一番大きい。
河川放流量に占める湖産種苗の割合は前年と同じ23%(2006年)であるが数量は前年より減少している。また、ここ数年割合的に増加傾向にあった海産・河川産の種苗であるが、2006年は14%と減少している。これは種苗採捕量が一部県において少なかったためと思われる。残り63%は人工種苗。
全体の養殖生産量が減少していくなか、生産量が増えている県もある。人工種苗を導入している業者が多いことがその理由である。人工種苗の導入と疾病防除が生産量を増やすポイントである。
今シーズン(2007年)の市場価格は入荷量の減少にも関わらず前年同様低迷して推移してきたが、7月に入り極端な入荷量の減少と注文量の逆転により一転価格が上昇した。また、冷凍アユの生産者在庫も少なく当面は高値維持と思われたが、盆明け以降市場販売が低迷し価格は下落傾向である。
アユ養殖業界は依然厳しい状態であり、養殖用は疾病対策強化による歩留まり向上による生産原価の引き下げ、放流用は河川での歩留まり向上策等による釣り人口増加が必要である。